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シンポジウム「抗腫瘍剤開発における新しいアプローチ」でご講演いただいた先生方のスライドと音声の録画です。(2025年9月24日金沢)
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特別講演1CasMab法を基盤としたがん特異的抗体の臨床開発
加藤幸成
東北大学大学院 医学系研究科 抗体創薬学分野・教授
がんや免疫疾患を中心としたあらゆる病気の診断や治療にモノクローナル抗体が活用されてきたが、 最近は、二重特異性抗体、抗体薬物複合体(ADC)、キメラ型抗原受容体発現T細胞(CAR-T)、T 細胞誘導(TCE)など、複数のモダリティが開発されている。一方、抗体への抗がん剤付加や免疫細 胞誘導を行う場合には、正常組織への毒性が懸念される。東北大学では、様々ながんに高発現するポ ドプラニン(PDPN)やポドカリキシン(PODXL)に対する抗体を複数作製してきたが、試薬や診断 薬としての用途には活用できるものの、正常組織への高い反応性のため、医薬品への応用は困難で あった。そこで我々は、正常組織に高発現する膜タンパク質に対するがん特異的抗体(CasMab)の 作製技術を開発した。また、膜タンパク質の精製を必要としない抗体作製法として細胞基盤免疫選択 法(CBIS法)を確立し、高難度な抗体作製を迅速に実施できるようになった。現在、PDPNや PODXLに対するCasMabの樹立を皮切りに、AMEDプロジェクトや企業との共同研究において、様々 な膜タンパク質に対するCasMabの作製に取り組んでいる。がん特異的抗体の作製には、標的選択、 抗原作製、抗体のスクリーニング法がポイントであり、必ずしも新規技術を必要としない。本シンポ ジウムでは、新規に樹立したHER2に対するCasMabについて紹介する。
講演1:ヒト臨床外挿性を高める前臨床モデルの統合活用による創薬支援戦略
田中 浩史
アクセリードドラッグディスカバリーパートナーズ株式会社
Pharmacology Business Unit Oncology
講演2:多様なモダリティに対応する免疫ヒト化マウスプラットフォームの構築
小川 雅弘
アクセリードドラッグディスカバリーパートナーズ株式会社
Pharmacology Business Unit Immunology
創薬において、ヒト外挿性の高い前臨床モデルへの関心が近年急速に高まっている。従来の動物実験は倫理面の課題とヒト予測性の限界から世界的に縮小傾向にあり、FDA をはじめ各国規制当局は非動物試験法(NAMs)の導入を推進している。その一方で、免疫応答や薬効・安全性を高精度に再現できる免疫ヒト化マウスの重要性はむしろ増しており、最先端モダリティを対象とする創薬研究においても不可欠な評価系となりつつある。当社は統合創薬プラットフォームを基盤に、低分子・核酸・抗体・ADC など多様な治療モダリティに対応した創薬支援を提供している。
現在は新薬開発の加速と成功率向上を目的に、複数の企業・医療機関と連携し、前臨床と臨床を橋渡しするモデルの整備に注力している。その一環として、ヒト新鮮がん臨床検体サンプル、がんオルガノイド、生体模倣システム(MPS)など、ヒト臨床での外挿性の高いモデルの導入を進めている。特に、免疫ヒト化マウスについては、多様なモダリティに対応可能なプラットフォームを構築しており、中核モデルでは腫瘍内にT 細胞と NK 細胞が共に生着・機能し、NK 細胞標的薬や免疫チェックポイント阻害剤との併用評価で高い有用性を示した。同一技術の応用により、標的細胞や遺伝子、治療形式に応じたカスタムモデルの開発も可能である。
本講演では、ヒト臨床外挿性を高める前臨床モデルの導入に向けた当社の取り組みについて概説した後、免疫ヒト化マウスプラットフォームの特長およびその具体的な活用事例について詳しく紹介する予定である。
ヒトT/NK細胞が共存可能な抗がん剤評価用新規モデルマウス
花澤 麻美
公益財団法人 実中研トランスレーショナルリサーチ部門
重度免疫不全マウスにヒト由来の免疫細胞や造血幹細胞を移植することでヒト免疫系を部分的に再構築したヒト化マウスは、がん免疫等の研究に広く用いられている。実中研ではこれまで、ヒトNK細胞の保持が可能な動物モデルとして、CMVプロモーターを用いてヒトIL-15を発現させたNOGマウス(NOG-hIL-15 Tgマウス)を提供してきた。本マウスでは、ヒト末梢血単核細胞 (PBMC) 由来NK細胞や培養ヒトNK細胞の長期的な体内保持が可能である。一方で、より多様なヒト細胞の分化を期待してヒト臍帯血由来造血幹細胞を移植すると、短期間で死亡し、試験に供することができないという課題があった。そこで本研究では、NK細胞を含む多様なヒト免疫細胞の誘導を可能とする動物モデルの樹立を目的とし、より生理的な発現分布および濃度でヒトIL-15を産生するモデルとして、バクテリア人工染色体(BAC)を用いてヒトIL-15 およびヒトIL-15受容体を発現するNOGマウス(NOG-hIL-15/hIL-15RA BAC Tgマウス)を新たに作製した。本マウスにヒト臍帯血由来造血幹細胞を移植したところ、移植後20週においても一般状態の悪化は認められなかった。さらに、末梢血中のキメラ率およびヒト細胞の構成比を経時的に測定した結果、従来のNOGマウスと比較して高いキメラ率を示し、移植2週後にはヒトNK細胞が検出された。加えて、移植12週目以降にはヒトT細胞も検出され、抗腫瘍反応の中核を担うNK細胞とT細胞が共存する動物モデルの樹立に成功した。以上より、NOG-hIL-15/hIL-15RA BAC Tgマウスはヒト造血幹細胞の移植を可能とし、ヒトNK細胞とヒトT細胞が体内で共存する新規動物モデルであり、がん免疫を中心とした研究に有用であると考えられる。
ex vivo CAR-T 療法の知見から探るin vivo CAR-T療法の課題と展望
内堀 亮介
自治医科大学遺伝子治療研究センター 特命講師
遺伝子治療は遺伝子を用いて疾患の制御や根治を図る治療法であるが、その手法の違いから、体外で遺伝子改変を施した細胞を用いるex vivo 遺伝子治療と、治療遺伝子を直接体内に導入するin vivo 遺伝子治療に大別される。現在、臨床応用が最も進んでいるex vivo 遺伝子治療の代表例が、キメラ抗原受容体(CAR)を用いたCAR-T療法である。CARは、がん細胞表面の特定抗原をT細胞に認識させ、がん細胞を特異的に傷害するように設計された合成受容体である。難治性血液がんに対して顕著な治療効果を示したことで保険適用も認められ、重要な治療選択肢となった。しかし、患者ごとにCAR-T細胞の製造が必要な現行のex vivo 法は、製造コストや治療開始までに時間を要することが大きな課題とされている。そこで、CAR遺伝子をウイルスベクターで直接体内に導入し、患者体内でCAR-T細胞を誘導するin vivo CAR-T療法の開発が模索されている。ウイルスベクターはロット生産や品質管理が可能であり、従来の医薬品のような on-demand 治療の実現が期待されるなど、産業的・医療的利点も大きい。一方、安全かつ効果的な治療の実現には、 T細胞特異的にCAR遺伝子を導入するベクターの開発や、CAR-T細胞の体内での効率的な増殖・長期存続を確保する技術が求められるなど、依然多くの課題が残されている。本シンポジウムでは、ex vivo CAR-T療法で得られた知見を基に、in vivo CAR-T療法の課題と将来展望について概説する。
